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Hakubi「結 ep」メンバーオフィシャルインタビュー公開!

■『結 ep』はある意味で大変化作だと思いますし、違う見方をすれば、片桐さんのメロディと歌の力がより一層わかりやすい形で表に出ている本質作だとも思って。その辺りのことを今日は伺いたいんですが、まず3人は、ここまでのHakubiの音楽をどういうものだと捉えられていますか。

 

ヤスカワ「そうですねえ……特別なことをやっている感覚はなくて、最寄りのコンビニみたいな音楽やと思ってます。必要なら立ち寄ってもらえればいいし、必要なかったとしても、そこにいつでもあるような存在というか。学校や会社が始まる前の日曜日の深夜にでも、5分くらい聴いてもらえれば意味があるというか。嫌なことがあった時、明日を迎えたくない時に横に置いてもらえたらいいなと思う音楽ですね」

 

マツイ「大きく言ったら今までになかったような歌の内容やと思うし、その届け方も今までにいなかったバンドやと思ってて。今まで日本で流行ってきた歌って、挑戦と後悔、成長と失敗みたいな物語を描いているものが多かったと思うんですよ。でもHakubiの歌は、そのどれにも属さない、狭間の感情を表現してるなって思うんです。『こうしたほうがいい』とか『頑張らなきゃいけない』とか言わないし、大丈夫だよって無責任なメッセージを歌うこともない。むしろ『泣きたい時に泣けばいい』って言ってくれる優しさがある歌やと感じていて。特に今って、しんどい時に『しんどい』って言いにくい世の中じゃないですか」

 

■はい。喜と楽以外の、怒と哀が無意識のうちに抑圧されてるというか。

 

マツイ「その中でも、キツいならキツいと言ってええんやと思わせてくれるのが片桐の歌やと思うし、それを届けるサウンドがシンプルやから、グレーな気持ちやのに真っ直ぐ伝わるっていう特徴を持ってるのがHakubiの音楽なのかなと思ってます。何より自分自身が、人間関係や日々の中で疲れた時にHakubiを聴くとハッとすることがあるので」

 

■そして、そういう歌を書かれている片桐さんはいかがですか。

 

片桐「元々、Hakubiを結成する前から曲は書いていたんですけど、どうやっても自分自身の歌しか書けなくて。だからHakubiに関しても、自分のことを好き勝手に表現させてくれているバンドっていう感覚があります。もちろんお客さんがいてくれてることもわかるんですけど、歌の矛先は常に自分自身に向くんですよね」

 

■ヤスカワさんがおっしゃったように、明日を迎えたくない気持ちに寄り添う歌だと思うし、片桐さん自身の葛藤と存在証明と「自分は変われないままだ」という嘆き・焦りが歌に出てくることが多いと思うんですけど。自分らしさを諦め切れない歌というか。ご自身では、自分の歌になってくるのはどんな感情だと自覚されてますか。

 

片桐「そうですね、焦りとか自己嫌悪は自分の中で大きくて。でも一方で、きっと自分は自分自身が好きなんですよ。本当はもっと頑張れるって思ってるからこそ、上手くいかない自分のことがもっと嫌いになる。そのどちらかに振り切れないし、真ん中でもない。そもそも『自分がよくわからない』っていう感覚自体が歌になってる気もするんですよね」

 

■たとえば“午前4時、SNS”でも歌われている通り、もっといい自分になれるはずだけど具体的な像があるわけでもない、でも周りは変わっていくばかりで焦りは募るし、「死にたい」と吐き出すことで生きていくしかないっていう。心の居心地がずっと悪そうですよね。

 

片桐「はい(笑)。それを歌い続けてる気もするんですけど……バンドを組んだのも、大学のサークルで私が弾き語りをしていたのをマツイが見ていて、それがきっかけで一緒にやることになったんです。だから、その頃からずっと自分の歌を歌っている意識で変わってなくて。かろうじて3人が共通して好きなのはMy Hair is Badとか、Ivy to Fraudulent Gameとかなんですけど、最終的にはそのどれにも寄らない感じになるのが面白いなと思っていて」

 

■マツイさんは、弾き語りをやっている当時の片桐さんの歌を聴いて、どんなことを感じたんですか。

 

マツイ「大学1年生の時に、軽音サークルの入部記念ライヴみたいなのがあって。新歓やし、ライヴ中も茶化したり騒いだりしてたんですよ。でも片桐が歌い出した瞬間、その声だけで部屋がシーンと静まり返ったんです。その時に歌ってたのが“17”だったんですけど」

 

■その頃にはもうあった曲なんですね。

 

片桐「そうなんです、自分が一番最初に作った曲なんですよ」

 

マツイ「それを聴いて、凄い声と響きを持ってる人やなってビックリして」

 

ヤスカワ「そうやな。片桐は僕らの持ってない価値観を持ってるし、自分の想いを言葉にして歌にする表現方法を持ってるのは、僕らからしたら羨ましいと思う。それに今バンドの結成の話で昔を思い出してたんですけど、俺は片桐もマツイも知らん状態でこのバンドに入ったんですよ。夜中の3時くらいに『バンドやりたいわぁ』って俺が呟いたら、その当時は知り合いでもなく名前を知ってる程度やったマツイから長文のDMが来て。要約すると『バンドやりましょう』っていう内容やったんですけど」

 

マツイ「はははははは!」

 

ヤスカワ「普通、プロを目指してバンドを始めるとしたら、知り合いでもないワケわからんヤツを誘うはずないですよね?(笑)。ただ、初めて彼女の歌を聴いた時には僕もビックリしましたね。凄い歌やなって」

 

■そこで、このバンドには武器があるっていうセンサーが働いたと。

 

ヤスカワ「そうですね。その頃はバンドの未来像があるかって言ったら違いましたけど、でも、この歌は武器になるなあって思えて」

 

マツイ「まあ、僕がアルくんを誘った理由は、『初心者よりも経験者のほうがいいなあ』くらいやったんですけどね」

 

ヤスカワ「ははははははは! 手っ取り早いからな。それに、個人では知り合いじゃなかったけど、元々対バンしてたバンドではあったもんな」

 

マツイ「そうそう、同い年っていうのは知ってたし。片桐と一緒にバンドをやろうとは言ったけどベースがいなかったんで、とにかく早くメンバーを見つけないとなあと思ってて。それで夜中にTwitterを開いたら、そいつが『バンドやりたいな』って呟いてたんで。今や!と(笑)」

 

■3人の共通項だった音楽も伺いましたけど、この3人で束になった時、音楽としてはどんな形になると実感できましたか。

 

片桐「曲は基本的に自分が弾き語りで作るので、個人的には、私の世界にふたりを引き込んでしまったなあっていう感じなんですよ。だから、バンドでやっているだけで、弾き語りで歌っていた最初の頃から本質的には変わっていないというか。自分は音楽性というよりも歌詞や歌のことばかりを考えてしまうので、そこにそれぞれのルーツやニュアンスを乗っけてくれることでHakubiになるっていう感覚がありますね」

 

■逆に言うと、音楽性が変わったとしても歌と言葉がブレなければ自分自身の表現としての核は変わらないっていうことですか。

 

片桐「そうなんでしょうね。むしろ、私の持っている歌とメンバーの音楽が混ざって変な形になるのが面白いんですよ。結果的に、今のギターロックと並べた時に、ちょっと違う形になってる気がするんですよね」

 

■ポストロック的なアプローチも入ってくるし、洒脱なリズムも多く入ってきますよね。音楽や歌は、元々ご自身の身近にあったものなんですか。

 

片桐「うーん……ずっと歌っている子だったかと言うと、そうでもないんですよ。カラオケに行っても、ピクミンの“愛の歌”くらいしか歌えなかったし、歌うこと自体が恥ずかしかったタイプなんです。私の家族は音楽が好きだったからピアノを習わせてもらったことはあったんですけど、歌ったり、自分の言葉を聴かせたりするのは、なんかこう……人に自分を知られてしまう感じがして恥ずかしかったんですよね」

 

■だけど今は、自分の内側を抉るような歌を綴られてるわけですよね。そのスイッチが入るきっかけはなんだったんですか。

 

片桐「人生懸けてやっていたスポーツと部活動を、いろんな事情があって高校生の時にやめたんですよ。その途端、自分には何が残るんだろう?っていうことを考えるようになって。他の人には大切なものがあるのに、自分には何も残らないじゃないかっていう焦りが出てきたんです。そう思った時に、歌と音楽に自分を遺すしかないっていう気持ちになっていって」

 

■ピアノを習っていたとおっしゃいましたけど、それは単純に音楽が身近にあるっていうだけの感覚だったのか、今おっしゃった自己証明みたいな感覚に近いものを当時から音楽自体に感じていたのか、どうなんですかね。

 

片桐「きっとカヴァー曲でよければ、ピアノを弾いてるだけでよかったんですよ。だから……やっぱり自分自身の意志をはっきりさせるために曲を作ったり自分で歌ったりすることが必要だったんだと思います。曲を作って歌うことによって、自我が生まれていったというか」

 

■曲と歌によって、自分の気持ちに気付かされていったと。

 

片桐「そうですね。それまでは、言葉にならない気持ちとか焦りの中にいるだけだったんですけど、歌の中でなら、自分にしかできないことをしたい、人とは違うことをしたいって言えたんです。それが、さっきも話に出てきた“17”っていう曲なんですけど。歌うことでスッキリしたし、その頃から自分の歌は基本的には変わってないと思うんですよ。感覚をメモに残すというか……言葉によって感覚が形を持つ感じがありましたね」

 

■まさに“17”には、世界は移り変わっていくのに自分は変われない、だけどいつかは自分に胸を張りたいっていう気持ちがストレートに綴られていると思うんですね。それくらい自分を証明したい気持ちが強いのは、片桐さんの場合はどうしてなんだと思いますか。

 

片桐「うーん……でも、それは誰でも持っている感情のような気がしていて。何かひとつでも、輝けるものが欲しいというか、ひとつでも自信が欲しいっていう気持ちだったんだと思います。それに私は、部活っていうものを失ったからこそ、自分を掴まないとやってられなかったので。何もない自分でも、なんとか愛したかったんです。目指してる姿を聞かれてもわからないくせに、でも今の自分から変わりたかったんですよね」

 

■自己愛と自己嫌悪って隣り合わせのものだと思うし、同じ箱の中に入っているものだと思うんですね。だからこそ、人に認められたからと言って解消する話でもないんでしょうし。ただ今回の『結 ep』の歌と音楽からは、「どうせ自分なんて」という歌から「どうせ生きているなら」っていう歌になったくらいの変化を感じたんですよ。そう言われてみると、自分では何か自覚的なものはありますか。

 

片桐「今までの曲は、どんどん下がっていった先で『どうせ自分なんか』っていうところで諦めて、そこからスタートする感じがあったんですよ。でも今回は、『それでも頑張らなきゃ』って思えるようになったのかな。……元々は、責任感とか影響力とか、背負うものが増えるのは嫌いだったはずなんですよ。『死にたい』って呟いたら『影響力のある人がそんなこと呟いたらダメだと思います』っていうリプライが届いたりするのが本当に嫌だったし」

 

■勝手に責任を押し付けるなと。

 

片桐「そうそう。でも、自分の歌を誰かが聴いてくれているのに壁を作っていたのは自分自身なのかな?っていう気持ちが生まれたといいますか……これがいいことなのか悪いことなのかはわからないんですけど」

 

■きっといいことなんだと僕は感じました。そもそも片桐さんのメロディは人を選ばないものだと思うし、それを自由に飛ばすという意味でも、視界が広がるのはとてもいいことなんだろうなと思うので。

 

片桐「ああ……ちょっと手を伸ばすようにしたんでしょうし、ちょっとだけ上を向こうとしたのかなって。今、話していて思いました」

 

■その変化は、どうして生まれたものなんだと思います?

 

片桐「ここから売れていかなきゃっていうのは率直に思いますし、スタッフさんやバンドメンバー、メンバーの家族や友達も含めて、恩返しをしたいっていう気持ちがどんどん強まってきたんだと思います。今度は私が『こんな自分になれたんだぞ』って見せる番だと思うようになったのかな」

 

■音楽的な面で言っても、『結 ep』ではプロデューサーを迎えられて、鍵盤やシーケンスも入ってくるという音楽的な変化があって。それによって音楽自体が広く開けている感覚がありますよね。

 

ヤスカワ「まさにバンドとして『挑戦』っていうのを一番のテーマにした作品なんですけど、プロデューサーにトオミヨウさんを迎えたことが大きくて。それに、他のバンドやったらこんなに毛色の違う3曲をひとつの作品にはまとめないと思うんですよ」

 

■ご自身は、どんな挑戦によってどんな変化を果たせたと思われてます?

 

ヤスカワ「言ってしまえば、次の大きなステップを見据えた今やからこそトライできることをやったのが今回の作品なんです。鍵盤やシーケンスも入れて、言ってみればポップになりましたけど、むしろここでバンドとして凝り固まるほうが怖いと思ったし、これまでの作品があって、これからのことも見えている今だからこそリスクを取って変化を見せることは重要やと思ったんです。この変化に対するお客さんの反応を見ることにも意義があると思ったし、もし『Hakubiは変わったな』って感じられても、この先を考えたら『こんなこともできるんやぞ』って見せるのはいいことやと思ったんですよ」

 

■端的に言えば、プロデューサーさんの導入によって、今作は音もアレンジもメジャー感とポップネスが強まっていると思うんですね。これは、今のHakubiをどう位置付けたから出てきた発想なんですか。

 

ヤスカワ「そうですね……もちろんアレンジとかは今までになかったものなんですけど、やっぱり自分達にはすでにスタッフさんもレーベルもついてくれていて、これまでに多くの作品を作らせてもらっていて。その中で凝り固まってしまうよりも、バンドの幅を自分達自身で広げていく気持ちがないといけないと思ったんですよね。ライヴハウスでやってきたバンドとして『3人の音で』っていう気持ちは強かったですけど、それだけじゃなくて、作品として闘えるものが必要やなっていうのは思ってました。たとえば僕のルーツはMUSEとかRadioheadなんですけど、そういうUKのバンドが持っているねっとりしたものはHakubiにも通じてると思ってて。そういう意味で、カラッと明るい海でバーベキューをしてるような音楽に変化はしたわけではないと思うし、変化作やとは実感してるけど、持っていないものを無理矢理やった感覚もないんですよ」

 

■そうですよね。マツイさんは、『結 ep』にどんな手応えがありますか。

 

マツイ「今までの作品では射程圏内にいなかった人も巻き込めるような作品になったと思いますね。1曲1曲のアレンジや色が立った結果、ちゃんとHakubiを広げていくための武器を見せられていると思います。大きく言えば、居酒屋の有線で流れていてもおかしくないくらいの曲を作れたなって。僕のルーツって言ったらJ-POPになるんですけど、バンドと出会う前に自分が『歌』として好きやった音楽のポップさとかもちゃんと入ってると思いますし。ロックバンドを知らん人でも好きになってもらえる気がしますね。それに、これは極論ですけど、音楽としてどんなにポップになったとしても、うちの大将が歌ってる歌なら大丈夫やろって思うんで(笑)」

 

片桐「大将って(笑)」

 

■それくらいブレない声と、簡単には変わらない自己葛藤の闘いが片桐さんの歌の中にはあるっていう信頼ですよね。

 

マツイ「そうですね。ほんまに、音楽的に誰かと一緒のことをやったとしても、片桐の歌があればHakubiの音楽になると思ってるので。片桐の歌の凜としてるところもそうですし、囁いてるように聴こえるけど、強い嘆きとか葛藤が残りますし……キャッチーとは違う形で心に残る歌やなって思うんです。その印象は、初めて“17”を聴いた時から変わってないですね」

 

■その“17”のアンサーソングとも言える“22”がわかりやすいと思うんですが、先ほどのお話にも通ずるように、歌の中に自己探求だけじゃなく光が見えるようになってきたと思うんですよ。だからこそ、その歌を飛ばすためのアレンジや彩りが自然な形で入ってくると感じたんです。

 

片桐「ああ……やっぱり、自分は気づかない間に『僕達』っていう言葉を選んで歌うようになってきた自覚はあって。自分のことだけを歌っていたはずなのに、知らぬ間に複数形になってた。自分達の目の前に人が見えていることが表れてるのかもしれないし、“ハジマリ”では特に、自分達を好きでいてくれる人達の先頭で軍配を持とうとしていたのかもしれないし。理想としては、先頭に立つんじゃなく全員が横一列で進んで行くことなんですけどね。そういうフェーズにいるからこそ、この作品で変化を選ぶことができたのかなっていう気もします」

 

■きっと歌の中では自分を探し求めて迷い続けるんでしょうけど、それでも歌と音楽は前に向かって進化し続けられていると思います。

 

片桐「……歌うにつれて、『自分がわからない』っていう感覚を持っているのは自分だけじゃないんだって感じてこられたところはあったんです。人と同じ目線で自分も立てているんだな、だから人と共に前を向けたらいいなって思ったのかもしれないですね。ずっと変われないことに苦しんできたし、なのに未来像あるわけでもなかった。それなのに社会も周囲の人も変わっていくから、置いていかれることが怖くなって。それでも変わらずそばにいてくれる人もいて……だとしたら、もう自分から進まなくちゃいけないんですよね。そういう気持ちは歌に出てると思います」

 

■それと同時に伺いたいんですが、今おっしゃったように人や世の中への焦りがあるからこそ、自分ひとりの静けさを守ろうとするところも歌に出てくるなと思うんです。周囲のことをめちゃくちゃ気にしながら、でも自分の周りのノイズを徹底的に嫌う歌でもあるというか。

 

片桐「ああ……たとえばSNSはわかりやすいですけど、ただ日常を送るだけでも勝手に情報が入ってくるし、街を歩くだけでも余計なものばかり入ってくるなっていう感覚はずっとあって。だから、『黙っててくれ』っていう気持ちも歌には入ってくるのかもしれない。でもその反面、誰かにはそこにいてほしいっていう願いも入ってくるし……矛盾してるかもしれないですけど」

 

■でも、その揺れこそ誰しもが持っているものなんだろうし、Hakubiの歌が人に寄り添える理由だと思う。たとえば<変わらない明日がそこにあるから/強く強く握りしめて>っていうふうに書かれたところに、自分の揺れを持ったまま踏み出そうとする意志が宿っていると思います。

 

片桐「ありがとうございます。ワッと吐き出すように曲を書いているから、その感覚について考えるいい機会だなって思いました。さっき言われたように、『どうせ明日が来るだけ』っていう歌を歌ってきたけど、『うまくいかない明日かもしれないけど、どうせなら踏ん張ってみよう』っていうニュアンスになったのが、“17”から“22”への変化だと思うんです。……確かにそうですね。変わらない明日だとわかってるのに、自分から行こうとしてますね。これは気づいてなかった(笑)。さっきの話にもなりますけど、変わらず近くにいてくれる人がいるから、こう歌えたんでしょうね。やっぱり自分は、上に立つ感じのアーティストが苦手だったんですよ。自分にとってのアーティストって、同じ目線の歌を歌ってくれる人だったから。だから私も、誰かに『こうしろ』なんて言いたくなくて。何より自分がどうするかなんですよね。あなたと同じ人間だし、同じ人間のひとりとして言わせてもらうけどっていうくらいの感覚なんですよ。自分の本質は変わらないまま、ちゃんと変われてきたってことなのかもしれないです」

 

■そうですよね。バンドとしても広がったし音楽的にも拡張したけど、核心は一切ブレていない。だからこそ、ここからより一層自由に飛んでいけるんだろうなと。今後がさらに楽しみになる作品でした。

 

ヤスカワ「そうですね。『変わった』って言って離れる人もいるかもしれないんですけど、むしろこの作品がスタートやと思っているし、ここから何を選択していくのかを見ていて欲しいなって思います」

 

矢島大地(MUSICA)